未来のかけらを探して

序章・とんでもない拾い物
 ―1話・プロローグ〜人ならざる2人組―



セシル達がゴルベーザやその配下と、熾烈なクリスタル攻防戦を繰り広げていた頃。
とある山中を歩く、二人の子供が居た。
人間に見える彼らは実は動物で、人間に直せば5歳くらいだろう。
「あーぁ、どうするのグリモー。ポーションもうないよ〜。」
金髪にくすんだ碧眼の子供が、灰色の髪とくすんだ黄緑の目を持つ相棒に声をかける。
金髪の少年の名はプーレ=クエス。本来はチョコボという足が速い鳥だ。
今はローブに近い服装の上、
優しげな顔立ちと外跳ねの長い髪のせいで、女の子に見える。
「んな事言ったってよ……。人間のとこにはいかねーぞ!」
グリモーと呼ばれた少年、グリモー=グレイモルはぶっきらぼうな口調で駄々をこねた。
モーグリである彼は人間に森を焼かれ、一族を失った。
そのため、極度の人間嫌いで炎恐怖症なのだ。
ちなみに彼は、プーレと対照的に活動的な服装である。
目つきもつりあがった三白眼なので、間違っても女の子には見えない。
「まったくも〜……今度モンスターが出たら、どうすればいいのさ。
ポーションがなかったら、ケガした時にこまるのに……。」
グリモーのわがままはいつものことだけどと、こっそりプーレがため息をつく。
彼は年が離れた行方不明の兄を探して旅に出ているのだが、
まだ何の手がかりもつかめていない。 手がかりといっても、どこにあるか分からない兄本人のにおいだけだが。
「うっさい!!オレは大っっっきらいな人間なんかにあいたかねーんだよ!!!」
グリモーは元々きつい角度の眉をさらに吊り上げ、ぎゃんぎゃん怒鳴り散らす。
彼は例え極限状態に陥って、人間以外に頼るものがいなかったとしても頼らないだろう。
人間にすがるくらいなら、ここで死んでやるとわめくに違いない。
まだそんなに付き合いは長くないが、賢いプーレはその短い経験で予想がついた。
「でも、変な呪いのせいで今ぼくたち人間だよ?」
「……それ言うなよ。」
プーレに呆れたような声で指摘され、グリモーががっくりと肩を落とした。
本来はプーレがチョコボ、グリモーがモーグリといった彼らが、今はなぜか人間の姿。
それというのも、少し前に森の中でうっかり動かした妙な石版の呪いのせいだ。
プーレはもう特に気にしていないが、グリモーは相当応えているらしい。
「と・に・か・く!オレはいかねーよ。」
こうなると、彼は頑固である。
温厚といわれるチョコボのプーレも、さすがにカチンと来た。
「……もういいよ。そこまで言うなら、一人で行くから。
来たくないんだったら、一人でここに居れば?」
プーレは、くるりと背を向けて早足で歩いていく。
ちらりと振り向くことさえしない。かなり怒っている証拠だ。
「あ、おいまってくれ!悪かったってば〜〜。」
女の子と間違うくらい優しい顔立ちに似合わず、とてもしっかり者なプーレ。
どこで作ったかわからない頬傷に三白眼。
外見からしても気が強い割に、プーレに全く頭が上がらないグリモー。
こんな2人の旅は、まだ始まったばかりだ。
プーレは、グリモーとあれから小一時間口もきいていない。
「なぁ、おねがいだよ……。悪かったからみすてないでくれ〜……。」
もうグリモーはうんざりを通り越して泣きたい気分だった。
さっきから、何度開き直ったり謝ったりしても何の反応も返ってこないからだ。
―う〜ん……町も村もないし、どうしたらいいかなぁ……。
が、そんなグリモーの心中をよそに、
プーレは考え事をしているため何も聞いていなかった。
「おいってばぁ!」
とうとうたまりかねて、耳元で大声を出して脅かせようとした。
「わぁ!……びっくりしたぁ。」
プーレは目をぱちくりさせている。 本当に驚いたらしい。
グリモーの狙い通りだ。
「お前が何もいわねーからだ!!」
本当に我慢の限界だったため、血管が切れそうなくらい機嫌が悪い。
だが、対照的にプーレは冷静だった。
「あ、ごめん気がつかなかった。どこでポーション手に入れようかなって思ってたから。」
「へ、お前たしかさっき人間のとこでって……。え?」
グリモーには、状況がわからないらしい。
今度はきょとんとした顔でプーレを見るだけである。
「あのね……。」
プーレは、あきれながら手短に状況を述べた。
先ほど地図を見たら、人間の街や村が近くになく、その上同種族の住処もない。
つまり、買いたくても場所が無いから手に入らないと言う事だ。
「……げーーっ!!」
さっきは散々駄々をこねていたが、説明されてやっと理解したらしい。
一気に顔が青くなった。
「なっちゃったものはしょうがないよ……。
しかもよく考えたら、行っても今はお金がないから買えないよ。」
道中で拾った財布は、もうすっからかんだ。21ギルしか入っていない。
泣きっ面に蜂とはこのことだが、どうしようもない。
せいぜいモンスターに会わないことを祈るくらいである。
「ガーン……。」
ショックを受けたまま立ち直ってないグリモーが、力なく呟いた。
「しょうがないよ、いこ……。」
諦めて歩き始めたその時である。突然、後方の茂みががさがさとゆれた。
驚いてそちらを見ても何も見えない。 だが何かいることは確かだ。
2人しかいない森に、茂みがゆれる音だけが不気味に響き渡る。
音と気配だけでは、魔物かどうかはあまり分からない。
肌をさすような敵意が感じられないことくらいだ。
そう思う間にも、がさがさと茂みがゆれる音は徐々に近づいてくる。
その音で身を固くする。 と、少したってから声が聞こえてきた。
「た〜ぁすけてぇ〜〜……。」
いかにも疲れきったような、自分達とさほど年が変わらない子供の声。
どうやら女の子のようだ。
「?……人間かよ?!」
グリモーは反射的に身を硬くし、愛用のモーニングスターをきつく握りしめた。
「ううん、匂いが違う・・何だろう?」
冷静さを取り戻してそちらのにおいをかぐ。
かいだことの無い匂いだが、明らかに人間のそれではない。
茂みを漁ると、やはりそこには見た目が同年代の少年と少女がいた。
しかしどういうわけか、かなりばてているようだ。
「あの……どうしたの?」
恐る恐る声をかける。すると、彼らは安堵したように息を吐いた。
なぜか汗びっしょりである。
「ふぇ〜、よかったぁ動物デ。」
どうやらこちらも、相手が魔物だったらどうしようかなどと思っていたらしい。
動物と判断した基準は、こちらと同じく匂いでだろう。
姿が変わっても、本来の能力や特性が失われないのはありがたい。
「おい、怪我してんのか?」
動物と知って安心したのか、グリモーは気遣うように声をかける。
人間でなければ、基本的にまともに対応するらしい。
「違うのぉー。」
ぶんぶんと、少女の方が首を振った。
「じゃあ、何で……?」
二人は首をかしげる。怪我でないとすれば、一体何故なのか。
歩きすぎて疲れたにしては汗をかきすぎている。
今このあたりは、長袖一枚で丁度いいくらいのすごしやすい気候のはずだ。
その上、彼らは二人ともノースリーブ。不可解なことこの上ない。
『暑いのー!』
悩み始めた二人の耳元めがけて、
異口同音に信じられない単語が飛び込んだ。
『はぁ?!』
その言葉に、二人の目が点になったのは言うまでもない。
しかし何か冷たいものがほしいといわれたので、
とりあえず2人を小川にひきずっていった。
「ぷはーっ、生きかえっタ〜♪」
全身ずぶぬれになりながらも、とびっきり機嫌が良さそうに二人は笑っている。
「ありがとぉ〜!」
あの後、この二人を川に入れたところすっかり元気になった。
体が程よく冷えたせいだろう。
「ったく、そんなカッコのくせになんであついんだよ?
そりゃ、走ったらあついけどさ・・」
「しょうがないじゃん、ボクら、ず〜っと雪と氷しかないところにいたんだヨ〜?」
この2人組が住んでいたのは、いわゆる極地だという。
そこはいつも雪と氷が解けないという聞くからに寒いところで、
そのためにこちらが暖かすぎてばててしまったのだ。
こんな事まで元の体と同じだと、かえって可哀想だとも思える。
「そういえば、名前は?ぼくはプーレ=クエス。こっちはグリモー=グレイモルっていうんだ。
本当はね、ぼくはチョコボでグリモーはモーグリなんだ。」
折角知り合ったので、まずは自己紹介。
「ボクパササ=ファイアラット〜、パサラだヨ。」
橙の長いふわふわな髪と、深みのある橙の目の少年がまっさきに名乗った。
様子を見たところ、たぶん暑くさえなければ元気の塊なのだろう。
「あたしはエルン=テウロラ〜。カルンで〜すぅ☆」
濃いピンクの目と、ほぼおそろいの色をしたウェービーヘアの少女も名乗る。
やや語尾がまのびしているのだが、恐らくパササと似たもの同士であろう。
ちなみに、パサラもカルンも極地の森にしかいない珍しい生き物だ。
本来の姿は、パサラならまん丸の毛玉状で、
カルンならウサギの耳にふかふかの大きな尻尾を持った小動物である。
「へ〜、パササがファイアラットで、エルンがテウロラの群れで生まれたんだ。」
人間同様、人語を解するくらい頭がいい生き物なら大体名字を持っている。
ただし人間のそれとは違い、それは所属する群れを表すものだ。
だから、パササはファイアラットの群れ、エルンはテウロラの群れという事になる。
ちなみに違う群れに加わると、元の名字の後ろに新しい群れの名字をくっつけるのだ。
だから、たまにものすごく名前が長い個体も居る。
「そーそー。あ、そうだ一緒にいこーよぉ!」
エルンがぱちんと手を打ち、また突拍子もない事をいって二人の目を点にさせた。
『へっ?』
あまりに話が飛びすぎて、一瞬思考回路が停止しかけた。
「グリモー達、動物に戻りたいんだよね?ボクらも一緒なノ。」
2人はやけに楽しそうだ。
あまりに楽しそうなので、何か企んでいるのかと深読みしたくなる。
「?」
まだ混乱した頭が元に戻らない二人が、
間抜けな表情で問い返す。
「だからぁ……。」
にこにこしながら、あらためてエルンは言い直す。
「一緒に行こうよぉ。」
普通、あったばかりの者に2回もこんな事をいうだろうか。
いくら同い年とはいえ、初対面でそんな気にならないと思うのだが。
おまけに種族も違うのに。
「2人より、みんなで一緒に言った方が楽しいヨ?」
パササがオーバーな動きでしきりに主張する。
確かに、それだけならば理にかなっているのだが。
「そりゃ、まぁ……。」
やはり納得できないのか、グリモーが口ごもる。と、突然腕を引っ張られた。
『きっまりー!レッツラゴォ〜☆』
パササとエルンが、いつの間にか先頭に立って仕切っていた。
「おいこら!勝手に決めるんじゃねえよ!!」
勿論怒って抗議するが、相手は全く聞いていない。
かなり強引なやり方という気もするが、本人達はすっかりその気である。
「まぁいいじゃない。ね?」
相手の説得を早々に諦めたのか、プーレはやんわりと相棒をなだめた。
「……」。
プーレが言うのでは仕方ないと、グリモーは黙り込んだ。
仮に、彼一人で抵抗してもどうせ相手は聞いてくれないだろう。
『やった、やった♪』
こうして、かなり強引に仲間が加わった。
当ても特に無い一行は、とりあえずそのまま東へ向かう。
パササとエルンが加わり、一行は一気ににぎやかになった。
会話の量は単純に2倍ではなく、3倍にも4倍にも増えた気がする。
食べる量に至っては、二人に共通する種族の特性のせいで10倍以上だ。
もっとも、パサラやカルンはかなり大量に食べなければ、
半日たたずに死んでしまうのだから仕方が無い。
「ねぇ、こっちには何があると思うぅ?」
進行方向を指差しながら、小首を傾げてエルンが問う。
「さぁ……?えーっと、地図見なきゃ。」
プーレが懐から地図を取り出す。
これは、トロイア国とバロンの一部が載った地図だ。
世界地図だけでは冒険には不便だと、
地図を買いに行ったときにその店の店主が親切に教えてくれたので購入した。
「えーっと……今、バロンの国境近くだね。
それで、このまま東に行くと……エスキシェイス村だよ。」
ここから見て東のバロンの国境は、大規模な山岳地帯である。
越えるためには、かなりの労力を要するという。
「そこ、確か何にもとれーねーって噂で聞いたぜ。 ポーションとか売ってんのか?」
あからさまに嫌そうだ。人間が一番の理由だが、
それと同じくらいの割合で行っても収穫が見込めないという理由がある。
「行かなきゃわかんないっテ。」
嫌そうなグリモーに比べて、なんとも楽しそうだ。
きっと、何があるのか気になってわくわくしているのだろう。
こうして、一行はエスキシェイス村へ向かった。
翌日の昼頃、一行は目的地・エスキシェイス村にたどり着いた。
ここは山の合間にあるので、道はかなり悪い。
「ふー、やっとついたぜ。」
険しい山道を歩いてくるのは、
普段獣道になれているとはいえ言葉では言い表せないくらい大変だった。
それだけに、人間の集落とはいえどっと安堵感が押し寄せる。
「やったーやったー!……って、アレレ??」
喜びもつかの間、まず先頭にいたパササが村の異変に気がついた。
残りのメンバーも遅れて気がつく。
「あれぇ、人がどこにもいないよぉ〜?」
きょろきょろ辺りを見回したり、手近な家を覗いてみるが、人っ子一人居ない。
「おかしいね、普通なら、誰か居てもいいと思うんだけどな……。」
プーレも付近を細かく調べまわるが、家々は空っぽ。
おまけに、どこも家の中は埃だらけで蜘蛛の巣が張っていた。
痛みがひどい家などは、一部が崩れていたりしている。
「おい!どいつかツラ出せよー!」
さすがに怖くなってきたグリモーが大声で呼びかけるが、返る声はない。
「しかたないから、とりあえずみんなで探そうよ。」
こうして、村人の捜索が始まった。
だが、家や畑を始め、村のどこにも人の姿は見受けられない。
そして、全員が諦めかけたときだ。
カサ……っと、後ろから物音がした。
「何だロ?」
くるりと振り返るが、茂みには何もいない。
「パササ、どうし――……。」
エルンが声をかけようとした刹那。
バシュッ!
鋭く赤い爪が空を切った。
パササの柔肌に、深い傷が刻まれる。
もう少しパササが前にいたら、完全に切り裂かれていただろう。
「な……だれだよ!?」
茂みから、深紅の体の豹が現れた。
"我が名はルブルム……。
憎きカーシーに殺められしノワールの半身。"
「だ、だれさそれぇ?!」
ルブルムが何をしたいのかを理解できない4人。
それに、いきなりノワールの半身などと言われても分かるわけが無い。
だが、このままでは身が危うい。それだけは本能でわかった。
"憎きカーシーの近縁種よ……、死すがいい!!"
そう言うが早いか、ルブルムは大きく跳躍した。
「わぁぁァ!!」
思わず、転がるようにパササが逃げた。
しかし、るブルムの狙いは狂わない。
『パササ!!』
深紅の爪が、疾風のごとき速さでパササの眼前に迫った。
もはや、ルブルムの攻撃は避けようがない。
ーもうおしまいかなぁ……まだ死にたくないんだけどナー……。
本人も諦めた、その瞬間だった。
『!!!』
パササの懐から宝玉が飛び出し、強い赤い光を放った。
その光は燃え盛る火の渦となり、ルブルムを飲み込み焼き尽くす。
"な……!!何故、貴様がそれ……を……"
そして、あっけなく燃え尽きた。後には骨さえも残らない。
「なん……だったのかな。」
「さぁ……なんだったんだろうねぇ?」
全員、ただ呆然としているだけだった。
一行は、エスキシェイスで起きた怪奇現象の原因解明のため、 急遽船でミシディアに向かっていた。
その後山を降りた先にいた商人に相談したところ、
そういう物はミシディアの魔道士が詳しいと教えてもらったからだ。
「たっくよー、何でんなおっかねー物持ってんだ?」
グリモーは、あきれ返った様子でパササを見る。
「だってさ〜、これきれいなんだもん。」
そう言って、今はしっかり首から下げている宝石。
それが、あの時怪奇現象を起こしたルビー。
色は最高色であるピジョン・ブラッド。大きさも、優に数百カラットある。
これだけのものでは、とても値がつけられないだろう。と、相談した商人が言っていた。
「ねぇー、どうしてミシディアにいくの?」
エルンが怪訝そうにたずねる。
「……商人さんの話、もう忘れたの?」
思わずプーレは、深いため息をついた。
「陸地が見えたぞーー!」
前のほうから、威勢のいい声が聞こえてきた。
前方に広がるのは、大きな港。
一行は、無事にミシディアの町に一番近い港にたどり着いた。
「ついたね〜。どうするノ?」
ミシディアの町に行くか、ここでこの石の秘密を調べるか。
町に行くためには、少し歩かなければならない。
出来ればここで石の秘密がわかるのなら一番いいのだが。
「う〜ん……どうしようか。」
とりあえずここは、情報を集めた方がいいだろう。
そこで、近くで買い物を終えたばかりの魔道士に聞いてみた。
「え、このルビーが火を噴いたって?」
まだ若いらしいその魔道士は、驚いて目を丸くした。
「うん。ねえ、なんでか知ってるぅ?」
魔道士は、腕を組んで首をひねる。
一分ほど悩んでいたが、結局分からないらしく肩をすくめた。
「こういうのは、ミシディアの町にいる大魔道士様達に聞かないとわかんないと思うよ。
この町を出て、北東に行けばすぐだから行ってごらん。」
親切な魔道士に礼を言い、準備もそこそこに早速港から町に向かうことにする。
しかし、「すぐ」と言う言葉を信じて楽勝だと思ったら甘かった。
「迷った〜……。」
「疲れタ〜。」
「もぅあるきたくな〜いぃ。」
プーレを除き、他のメンバーは全員ばてていた。
「もぉー……、エルンは女の子だからしょうがないけど、 みんなだらしないよ〜。」
先頭をすたすた歩き続けていたプーレが、立ち止まって仲間を一喝した。
「元気なおめーが変なんだよ!」
グリモーは、口だけはまだ元気だった。
しかし、息が上がっているので首から下は全然元気ではなさそうだ。
「それにしても、困ったね〜……。 まさか、こんな所で迷うなんて……。」
ミシディアの町は港町から5キロ。商人が通る大きな道もある。
それなのに、迷ったのだ。
原因は、そろいも揃って新しい土地の珍しい植物や動物に気を取られたためだ。
「あ、あんな所にメドーサヘッドがいるよ。」
見ると、メドーサヘッドが籠に荷物を入れて飛んでいる。
片手にレトロな財布つきだ。
「本とだー、お使いかなぁ?」
なかなか面白いので、じっと観察してみる。
と、向こうも気がついたようだ。
「メド?……メッドド〜♪」
こっちを向いて、にっこり目を細めて笑っている。
そして、いきなり魔法の珠を投げられた。
名前の通り、これにはさまざまな魔法が封じられている。
投げられて物に当たったショックで、魔法が開放される仕組みだ。
『わーー!!』
一行の足元に落ちた魔法の珠が紫がかったピンクの光を発する。
魔法陣が一行の足元に瞬時に描かれ、目の前に生じた空間の裂け目に飲み込まれた。
かなり心臓に悪かったが、どこも痛くは無い。移動魔法だろう。
それにしても、一体どこに飛ばされるのだろうか。
残念ながら、魔法の名前も分からない彼らにそれを知ることは出来なかった。



―次へ―  ―戻る―

話の筋が今見たらぼろぼろで、修正に多大な労力を要しました(※2003・5月末現在)
大筋を変えずに辻褄合わせをきちんとするのも大変です。
後、オリジナル魔法が出てきました。……名前は次回ですが。
これは、銀の風にも恐らくちょくちょく出てくるかと。魔法の珠で(笑)
ついでに、パササの目はオレンジでした。うっかりにも程があります。
それと、こちらにも「銀の風」とおそろいの仕様にしました。